GW、皆様いかがお過ごしだったでしょうか。
子供がずっと家にいたので、一緒に畑仕事をしたり、友人が遊びに来たり、友人の家に行ったり、、、
最後の2日間はずっと雨だったので、久々に色々と読書したり、仕事はなかなか進まない日々でしたが、どこにもいかずゆっくりできた日々でした。
2021年9月に政府が発表した「みどりの食料システム戦略」について思うことを少し。
2050年までに技術力で達成する目標数値を出している、
農林水産業の二酸化炭素排出ゼロの実現、化学農薬の使用量50%削減、化学肥料の使用量30%削減、
有機農業面積を100万ヘクタール、耕地面積の25%に拡大 など
消費者の視点から見て、自分たちが食べる作物の農薬や肥料の使用を削減していくことに反対する人はいないでしょう。
私は現在、肥料も農薬も使用しない方法で作物を育てている身として、それが推進されることはのぞましいことだと思います。しかし、それをどうやって達成するのか?と考えた時に、多くの疑問が沸くのです。
まず、農家は高齢化が進んでいます。私がこの田舎に来て15年目ですが、離農が進み、益々高齢化も進んでいます。周りの農家を見ても、田んぼに肥料をまく手間を省くため、一発肥え(カプセルに肥料が入っていて、一度まくだけでよい)という化学肥料が普及され、草刈りもなかなかできない方々も多く、除草剤や農薬の使用が減る気配はありません。
私たちの農薬や肥料を使用しないスタイルは、最初反対されたものの、地域の方々は今は受け入れ温かく見守ってくださっていますが、「このやり方がいいことはわかっとるが、わしゃあ、こんなことはできん。」と言われ、昔を懐かしみながら、昔はこうしていたという話を伺うことが多いです。
きっと中山間地域の多くは、似たような現状であろうと想像する中での「みどり戦略」。まさか、農薬も肥料も使わない自然農法を推奨していきましょう!という流れではないとすれば、この目標を成し遂げるにはどうすればいいのか??
最近の農業新聞でよく目にするのは、「下水汚泥のリン回収と堆肥化」の話題です。下水汚泥の中には肥料の3大要素の一つであるリン酸なども多く含まれるので、それを回収し、また汚泥を肥料化して有機肥料として販売する動きが進んでいます。
また、放射線育種米を主要品種として導入していく動き、ゲノム編集作物の市場開放の流れ、RNA農薬(遺伝子組換え農薬)の開発・普及に向けた動き・・・
ゲノム編集技術で開発されたフグ(体内の満腹感に関わる遺伝子を破壊することで、食欲が満たされることのないまま旺盛に餌を食べ続けて巨大化したトラフグ)がふるさと納税の返礼品になっている市があり、安全性などを不安視した市民団体や消費者連盟が立ち上がり、ようやく市が説明会をすることになったという記事も見ました。
まだ安全性も不透明なゲノム編集の農水産物は、表記する必要もないので、知らないうちに口に入れている可能性もあります。
培養肉(細胞を培養して作られる)や精密発酵による乳タンパク質を使った乳製品などの開発も進み、土がなくても野菜は育ち、鶏や豚や牛や魚や乳製品は遺伝子操作とバイオ技術で作り出せ、必要な栄養も添加できる時代が近づいています。
そのような世の中の動きを見ていると、目標達成のために、最先端の科学技術を駆使した農業に移り変わっていくように感じます。この目標が達成できたとして、私たちの食卓は豊かになるのでしょうか。人として何を食べてどう生きていきたいのか。一見良いことを並べたて、誘導されていく先が本当に進むべき道なのか、その先にある未来も考えてきちんと見極めて選択する岐路に立たされているように感じます。
そして、農家が急速に減少、高齢化する現状では、まさにこの分かれ道は一度選べば後戻りの不可能なものとなってしまうように思います。
今の慣行農業は、化学肥料や農薬などの近代技術を用いることで、多量かつ安定的な生産を可能としてきた一方、土壌の疲弊や環境汚染を引き起こし、限りある地球の資源を使い尽くさんとしています。しかしながら、これら近代技術の使用が生み出した問題に対して、更なる技術の上塗りが本当の答えとなりうるのでしょうか。案外、これまでの歩みをふりかえり、自分の足元を見直してみると答えが転がっているものなのかもしれません。
私にできること、一人一人にできることは限られていますが、できることを一つずつやっていきたいと思います。
自然と向き合い生まれてくるもの、その美しさを大切にしたい。どんなに科学技術が進んでも、それでは得ることのできないものがあることを、この14年で感じながら、それを拾い集める作業をしてきました。
毎日自分が食べるに足るほんものを、持続可能な方法で。そして、そんな人が増えていきますように。
今年は少し、色々思ったことも文章にして伝えていく時間も作りたいと思っています。
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