スリランカの在来作物の形(スリランカの旅③)

2015年3月19日

今回の旅で、スリランカの在来作物や伝統野菜なども、興味深く見てきました。

スリランカの主食、お米についてもかつてはたくさんの稲の在来種が存在していましたが、今はその種類もわずかしか残っていないようです。収量が多く、作りやすい稲を現代の農家は求めているからです。

昔は、僧侶のための栄養価の高い品種のMawee、授乳中の母親むけのHeenati、水田で働く人々のためのKanni Murungaなど、用途に応じた様々な品種がありました。また、水不足の時に向く品種などもあり、その年の天候にあわせながらの栽培をしていたようです。
そして、稲の収穫時期には、鳥が熟した稲を食べにきますが、kukulu paluwaと呼ばれる鳥用のお米も作って、お互いに食べ分けをしていたそうです。そのお米については、誰も知りませんでした。もう残っていないのかもしれません。


町にある園芸店に行ってみました。
「F1でない種はあるか?」ときいたところいくつか出してくれましたが、豆類が主で、果菜類はF1が主流となっています。ましてや「在来種は?」となると、園芸店で販売はしていません。

それ以外には、農薬、そしてそれぞれの作物に適する肥料がたくさん並んでいました。


キャトルムルンガという植物は、マメ科で地力を上げるのによいとされ、オーガニックファームでは、畝幅5mごとに1列のキャトルムルンガを植えているところもありました。

この花は食用に使われ、葉は栄養が豊富だそうです。

私が市場でショウガを見ていると、友人のお父さんに「それはチャイニーズジンジャー」と言われました。「スリランカのショウガは?」ときくと、スリランカのショウガの香りの素晴らしさを話してくれましたが、サイズがとても小さく生産量が少ないのでほとんど見ることがなくなってしまった、と言われました。友人の住む地域は、ショウガの産地ですが、その地域でさえも、ほとんどの人がチャイニーズジンジャーを育てているそうです。

私が残念がっていると、お父さんはバイクでどこかにでかけ、新聞の包みを持って帰ってきました。
「友人の家の庭にスリランカのショウガがあったよ」と実物を見せてくれたのです。


また、別の友人のお父さんを訪ねると、パイナップル畑で苗作りをされていました。畑のそばには、ルッファという伝統野菜が半野生化していました。種取りしながら、ずっと育てているそうです。

お米も、昔の品種を栽培していて、もう少しすると収穫期を迎える状態でした。


大学の研究機関には、モデルケースとして在来野菜を育てている場所もあり、そこにも色々面白い野菜がありましたが、その中でもArangaはとても美しく興味深い野菜でした。


3日間泊めて頂いた友人の実家の庭には、色々な植物が育っていました。
ナスのような花が咲き、小さな実がつくwel thib-batuは、スリランカの在来植物。実は食べませんが、葉は咳止めになり、カレーにも使います。


コチという在来の唐辛子。白と赤があり、とても小さいですが、とっても辛いそうです。スリランカの人でも、みんな食べられるわけではないという辛さ。でも、鳥が食べるそうです。なぜでしょうか・・・


カレーに欠かせないカラピンチャ(カレーリーフ)とランペ。

カレーリーフは庭のあちらこちらに自生しています。

やはり、在来種は大きな農園ではなく、個人的に野菜を栽培している人のところに多く存在するのかと気づき、それはやはり日本と同じであると感じました。大量生産するためではなく、味や香りがよいとか、咳が出た時にその葉を使うなど、人々の家庭の中に根付いた形での存在。そして、それが本来の形。
みんながそれぞれに、普段に利用するもの、美味しいと思えるものを作ること、人はいつから自分が生きるために食べるものを他人に委ねてしまうようになったのだろう・・・

スリランカでは、きっとこの状態がこれからもっと加速していくだろうと思います。気がつけば、多くの在来種を失うことになるかもしれません。それは日本も同じです。
でも、本当によいものは、それぞれの家庭の庭や畑でひっそりと受け継がれていく、それが在来種の本来の姿であるのかもしれません。

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