スリランカのオーガニックとは(スリランカの旅②)

2015年3月11日

 今回の旅で、いくつかの農園を巡りましたが、友人に「オーガニックファーム」に行ってみたいとお願いしていたので、いくつかのオーガニックファームに行くことができました。

一つは、マータレーにある、「Ecological Farm&Agricultural Training Center」。
ここのプロジェクトマネージャーからお話を伺うことができました。
現在4年目、面積は12エーカーで、お米、野菜、スパイスなど伝統品種を中心にし、化学肥料や農薬を使用せずに栽培しています。(ここでいう伝統品種とは、地域の村で育てられ続けている種を分けてもらっているそうです。)

この農園では、太陰暦にあわせて栽培し、1年間を2つの栽培期間にわけ、表を作っています。


この色分けされているのは、それぞれ適する時期を示しているそうです。


また、土の中の微生物を活性化させるため、堆肥として牛糞を使用しています。この牛糞は農園内で飼育している牛のもののみを使用し、その牛には農園内の草やココナッツをメインで与えているとのことでした。


そして、「Kandyan forestgarden system」=自給自足的農業(キャンディ地域の伝統農法)で、森・スパイス・米・野菜・・・必要なものは全てそこでまかなうというやり方です。
そのため、大規模に単一作物を栽培するということはせず、通常1種類を栽培する面積で5種類の野菜を栽培するそうです。


ここで作られた作物は、農園の入り口のお店で販売しています。


伝統品種の色々なお米や野菜を購入することができますが、価格は慣行栽培にものとほとんど変わらないとのことです。それがこれからの課題である、と言われていました。


それはなぜか?オーガニック=高いが需要がない、というのが今のスリランカの状態だそうです。
これは、国の研究機関などでも同じようなことを言われました。オーガニックに関心のある農家もいるし、国としてもその方向に進めたいが、国民は安いものを求めるので、オーガニック農家は経営が難しい、と・・・すぐに高収入に結びつくかどうか、が判断基準になっています。


一方、コロンボ(商業主都)に行くと、少し印象は変わります。スーパーでもオーガニック野菜のコーナーができ、スパイスなどもオーガニックコーナーがあり、倍位の価格で販売されていました。
昔はあまり多くなかった生食用葉物が市場にも増え、健康を考える人が増えているように感じ、全体として生活水準も上がっています。友人たちや色々な試験場の方々と話していると、ただ、「オーガニック=体によい」とただ捉えられ、それを一つのステータスにしているようにも感じます。

そして、友人達からこんな話もききました。
昨年、お米の主要産地であるアヌラーダプラ、ポロンナルワ地域で大洪水が起き、お米の収量が激減しました。そのため、以前は60-80ルピー/1kgだったお米が、今年は80-160ルピー/1kgと倍位の価格になったそうです。そして、インドからの輸入米は40-60ルピー/1kgです。
さて、どちらを選択するか?
多くの友人は「インドからのお米は美味しくない。高いけど、スリランカ米を買う」と。

オーガニックで倍の価格になった野菜を買う人はいなくても、お米が倍の価格になっても、美味しい方がよいと買う人はいる・・・
ということは、オーガニックが高いから買う人がいないのではないのかもしれない、とも思います。

過渡期である現在のスリランカでは、オーガニックの根本を考えている農家は本当に少数であると感じます。オーガニックの農場でも、オーナーが畑に立つことはなく、オーナーがオーガニックの方針を労働者に指示し、労働者はただ指示された栽培法に従うだけという栽培がほとんどで、ウッパワンサ氏のように自ら畑で実践し、自ら考え、指導している人はほとんどいないのが現実です。
「オーガニック=無農薬栽培、収入が増える方法」と思うだけでなく、多くの作り手が将来に向けての持続可能な方法として捉えてほしいと強く思いました。
そして、そこから生み出されるものの本当の意味を考えられるような作り手と買い手が増えていってほしいと、変わり続けるスリランカの農業の一端を見て感じました。

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